2018年3月12日月曜日

17.04.29 第18回 全州国際映画祭 ドーム上映前の舞台挨拶

同日午後の野外トークステージの直前に行われた
インターネット生中継を訳した記事はこちらです。

*以下の文中には、映画『アシュラ』本編の内容に言及する箇所があります。
*客席との有言・無言のやり取り、英語通訳に関するやり取りを省略しています。

 

(監督と俳優の挨拶―省略)

司会 監督に簡単な質問をさせて頂いて、もし余裕がありましたら、皆さんの質問も受け付ける事にいたします。

いかにして、この素敵な方々と組むようになったのかをお話頂きたいと思います。

キム・ソンス監督 まず、全州映画祭で、こうしてアシュラをまた…旬が過ぎた映画を再び呼んで下さって感謝していますし、私にとっては恩人のような方々ですが、私が尊敬し、愛してやまないアスリアンの方々にも来て頂けて嬉しいです。

この映画は、私としては一生懸命に作りましたが、大衆から共感を得る事に関しては失敗している部分もあると思います。ですが、私自身の満足度は最も高い映画です。また、映画を作りながらも、本当に幸せだった映画です。

特に、この場には来られませんでしたが、ファン・ジョンミン氏とクァク・ドウォン氏を含め、韓国映画の錚々たる5人の俳優と共にいた瞬間が、私にとっては本当に刺激的で、喜悦を味わうことができた瞬間でした。

司会 チョン・ウソン俳優は、この映画祭に審査委員としていらしたことがあり、今回も忙しいスケジュールの合間を縫って是非とも来たいと…全州に再び来られた感想を伺います。

チョン・ウソン 久方ぶりに来ましたが、とても嬉しいです。今回の全州映画祭を通じて(私が)格別に想っている『アシュラ』という作品を、全州市民の皆様と、アスリアンの方々と久しぶりに分かち合える時間を持てる事を、嬉しく思います。

司会 チョン・マンシクさん、映画の中でゾッとさせられたシーンがあります。チョン・ウソンさんを強打するあの有名なシーン…

チョン・マンシク 「イケメンだから殴った」シーンのことですね?

司会 そこでどんなディレクションをもらって、アクションを撮られたのか…

チョン・マンシク ディレクションは、キム・ソンス監督が、思う存分に叩け、死ぬまで叩けとおっしゃるので…ご覧になりますと、映画では13回だったか、14回ぐらいしか出てこないですが、すごくたくさん殴りました。そうしてカットが出来上がったわけですが、私は楽しく殴りました。普段はそんな人じゃありませんよ。人を殴ることはできません。(訳注:毛布越しに殴られる時のドギョンの上半身は、動く人形です

司会 胸を痛めるような表情を浮かべましたでしょう。その豹変について…

チョン・マンシク ここまでやる必要があるのか、とも考えましたし、そのカットを撮るときに…ハンカチを受け取りたくないと(私が)話しましたら…受け取るなと言われて…(タオルを)1枚かけてくれと言われまして…それで拭ったんです。あなたの命令だとしても、ここまでやらなくてよかったんじゃないかと、私は考えたわけです。

司会 現場で少し変わったわけですね。

チョン・マンシク はい。少しだけ。

司会 チュ・ジフンさん。これまでは優しく、繊細な役が多かったのですが、この映画を観た瞬間、むしろこういうキャラクターの方が似合うんじゃないか?と思えました。このカッコいい先輩の方々と並ぶ男性的なキャラクターは…一味違った挑戦であり、変身とも言えそうですが、一緒に撮りながら、どう思いましたか。そして、キャラクターについて、どう思われますか。

チュ・ジフン 『アシュラ』は誤解されがちですが、本当はとても水彩画的な作品です。美しい線で描かれた作品であり、その中には赤色と…(ウソンに対して笑う)

私達は、大将である監督の指揮の下、楽しく、懸命に撮りました。この映画は俗な表現でいうと、キツイ(빡센)味わいがありますが、私は(この中で)最年少ですけれど、兄達がものすごく優しく、善人であられました。隣にいるウソン兄さんは「生きている賢者」スタイルです。撮影現場は熾烈ではありましたけど、隣で見ていると…私は最年少ですが30代中盤です。あのオジサンたちが寄り集まって、あんなに優しく互いを慈しみ、優しく気遣い…そうやって撮っていたので、意外なことに、こんなジャンルの映画を撮ると精神的なダメージがあると思われがちですが、そうではなかったと思います。とても幸せに、上手く撮れたと思います。

司会 時間がございませんので、質問はお二人様までお受けいたします。

質問者1 映画は去年から本当にたくさん観ています。釜山国際映画祭でも観ました。大好きな映画です。俳優の方々に質問です。『アシュラ』では、それぞれのキャラクターが持つ利己心があると思います。個人の欲望といったものが…私は何回も観ながら、ムン・ソンモの利己心は何だろうかと考えました。他の俳優ははっきりと表れているのですが…それがとても気になって…監督と俳優はどうお考えなのか…

チュ・ジフン 私の考えでは、とにかく皆がピンチに追い込まれた人々です。パク・ソンベすらも、より上の権力によりピンチに追い込まれています。ソンモは本当は、ドギョンのことが本当に好きだから(市長の元へ)行ったわけですが、行ったらお金もたくさんくれるし、よくしてくれる。そこで、最初のテ社長のところ、パク・ソンベが演説をなさっているでしょう。そこで、私が任せられたミッションを上手くこなすことができず、俗な言い方でトンチンカンになっているとき(어리버리하고 있을 때)、ドギョンがいきなり飛び出してきて、解決したでしょう?その時から軋み始めたのかと…プライドもかなり傷つき、自分のミッションを奪われたともいえますから。その次に、飯屋のシーンに移ると、初めて兄さんに、専門用語ですが、突っかかり始めて(삐대기 시작을 해서)…私はキャラクター的にはそんなふうに考えました。監督がこれから正解をお話くださるでしょう。

キム・ソンス監督 ムン・ソンモは、ハン・ドギョンの過去の姿のようなものだと考えました。つまり、邪悪な世界に第一歩を踏み出す新入生のようなイメージです。我々は皆、男どもが、そしてあらゆる人々が、ある社会に編入されると、その社会で勝利したいと思い、成功の階段を上りたいと考えるでしょう?邪悪な世界に足を踏み入れるときはその人々が格好よく見えますし、そこで早く成功したいと感じますが、ムン・ソンモの結末は、ハン・ドギョンが迎える結末と同じだというイメージ…そう考えたのです。すなわちムン・ソンモとハン・ドギョンは、同じ人の表と裏のようなものだと考えていました。

チュ・ジフン それで、私達はこんなことをよく話しました。ウソン兄さんと、監督とも。ムン・ソンモは、ハン・ドギョンの心の中のある一部を、監督が一種の装置、もしくはキャラクターとして抜き取って、お作りになったのではないか。とも考えましたね。

チョン・ウソン ハン・ドギョンが対面する全てのキャラクターは、見方によってはハン・ドギョン自身を映す鏡だと思いますが、ムン・ソンモという鏡は、最もか弱く、人間的で、傷つきやすく、そして、最も保護してあげたい…ハン・ドギョンの立場からすれば、そんなキャラクターでした。

質問者2 それぞれの俳優の方々にとって『アシュラ』とは?何なのか。どんな映画なのか。伺いたいです。

チョン・マンシク 私が結婚を選んだことほどに、自分が利口なことをしたと、そして、選んでもらえてよかったと…幸運だったと思っています。結婚と同じほどに感謝を覚える作品です。

チュ・ジフン 個人的には、こんなに良い兄さんたちと監督に出会えて、俳優という非常に長い戦いにおいて、まさに千軍万馬を得ることができました。また、私の人生が進む方向と、これから映画俳優として進む方向において、すごく大きな転換点となった作品ですので、私はひたすら感謝しています。

チョン・ウソン ハン・ドギョンは…愛することが難しいキャラクターです。ですが、(私には)大事にしたい、面倒を見てあげたいキャラクターです。キャラクターに関してはそうです。映画『アシュラ』は、私の映画俳優としての姿勢、時間を巻き戻してくれています。監督との映画作りの現場を懐かしんでいましたが、私がなぜ監督との現場を懐かしんでいたのかを、再び思い起こさせてくれて…俳優としての、映画人としての情熱を、今一度、取り戻させてくれた、そのような作品でもあります。

司会 俳優の皆様のお話を伺いますと、ここにいらっしゃるアスリアンの方々にとって『アシュラ』とは?という質問をしたくなりますね。これにて舞台挨拶を終えて、映画を観ないといけませんけれど、その前に、俳優の皆様に、観客を背負って写真を撮って頂きましょう。私が合図を送ったら熱狂してください!